本記事は、東京不動産研究所『東京不動産データレポート』2026年第3四半期(創刊号)の全国編です。レポート全文は、bukken.ioの日本不動産市場レポートページでお読みいただけます。
「日本の住宅は安い」という言葉が正しいかどうかは、どの市場の話をしているかによります。2025年の全国の中古マンション成約は54,353件、東京都の成約㎡単価は108万円で、東京以外の道府県の中央値41万円の2.6倍です。価格のほかにも、成約件数、5年上昇率、人口の流れは地域によって大きく異なります。これらをあわせて見てはじめて、自分が比べているのが同じ種類の市場かどうかがわかります。
東京は108万円、東京以外の中央値は41万円
㎡単価の上位5は、順に東京都 108、神奈川県 57、大阪府 56、京都府 54、沖縄県 45(万円/㎡)です。
5年変化は、東京都 +27.1%、東京以外の中央値 +32.3% です。サンプル500件以上の都道府県で見ると、5年上昇率の上位3は大阪府 +50.5%、福岡県 +43.6%、京都府 +34.5% です。サンプル100件未満の県の前年比は参考値です。

図1 47都道府県 中古マンション㎡単価 上位20(2025年、前年比を併記、古銅色の線は東京以外中央値)。出所:国土交通省「不動産情報ライブラリ」より東京不動産研究所作成。
中古マンションは、実は3つの市場
全国の中古マンションは、次の3つの市場に分けられます。
- 東京圏
- 大阪・名古屋・福岡などの大都市
- その他の県
5年上昇率は大阪 +50.5%、福岡 +43.6% と、いずれも東京の +27.1% を上回りますが、成約の厚みは東京の47%と16%にとどまります。つまり、リターンは高いものの、出口にも時間がかかります。
判断の順序は、まずその県の年間成約件数、次に価格です。 年間成約が500件未満の県は、価格は安くても流動性が不足しているため、そのまま機会とはみなせず、前年比も市場シグナルにはなりません。「日本の住宅は安い」と聞いたときは、第3の市場の価格に、第1の市場の流動性を組み合わせて考えないよう注意が必要です。
表1 47都道府県 中古マンション㎡単価・前年比・5年変化(2025年)
| 都道府県 | 件数 | ㎡単価(万円) | 前年比 % | 5年 % |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 16,325 | 108.0 | 8.0 | 27.1 |
| 神奈川県 | 7,454 | 56.9 | 3.5 | 28.1 |
| 大阪府 | 7,667 | 55.6 | 12.4 | 50.5 |
| 京都府 | 1,214 | 53.8 | 7.6 | 34.5 |
| 沖縄県 | 145 | 45.5 | -3.4 | 13.6 |
| 福岡県 | 2,598 | 42.1 | 5.3 | 43.6 |
| 埼玉県 | 3,036 | 41.5 | 7.7 | 32.2 |
| 兵庫県 | 3,370 | 40.0 | 4.3 | 30.0 |
| 千葉県 | 2,716 | 35.3 | 2.9 | 27.3 |
| 滋賀県 | 293 | 34.0 | 0.5 | 7.4 |
| 長野県 | 96 | 33.8 | -3.7 | 18.5 |
| 広島県 | 428 | 32.9 | 4.7 | 9.7 |
| 愛知県 | 2,475 | 32.5 | -2.5 | 19.7 |
| 宮城県 | 699 | 31.7 | 5.6 | 16.7 |
| 長崎県 | 147 | 31.1 | -0.7 | 21.0 |
| 山梨県 | 63 | 29.4 | 56.2 | 69.0 |
| 岡山県 | 196 | 29.3 | 1.9 | 15.3 |
| 鹿児島県 | 153 | 29.1 | -3.0 | 1.2 |
| 熊本県 | 155 | 27.7 | 22.6 | 29.5 |
| 富山県 | 86 | 26.8 | -10.8 | 45.0 |
| 和歌山県 | 73 | 26.7 | 33.3 | 58.7 |
| 奈良県 | 362 | 26.7 | 15.5 | 33.3 |
| 三重県 | 147 | 25.7 | -1.3 | 21.4 |
| 茨城県 | 212 | 25.2 | -13.2 | 8.5 |
| 鳥取県 | 46 | 25.2 | 6.4 | 25.8 |
| 岐阜県 | 124 | 25.0 | 10.3 | 25.0 |
| 石川県 | 131 | 25.0 | 1.4 | 17.2 |
| 栃木県 | 137 | 24.6 | 8.4 | 51.7 |
| 北海道 | 1,625 | 24.4 | 0.0 | 22.2 |
| 福井県 | 29 | 24.3 | 9.6 | 40.1 |
| 宮崎県 | 74 | 24.0 | 10.4 | 7.5 |
| 新潟県 | 269 | 23.8 | 18.8 | 27.2 |
| 島根県 | 26 | 23.3 | -13.3 | 0.5 |
| 静岡県 | 513 | 23.1 | 2.1 | 15.4 |
| 高知県 | 32 | 23.0 | -14.5 | 20.9 |
| 佐賀県 | 60 | 22.5 | 12.5 | 5.0 |
| 山形県 | 49 | 22.5 | 5.9 | -2.4 |
| 群馬県 | 139 | 21.5 | -5.4 | 16.0 |
| 愛媛県 | 168 | 21.4 | 6.9 | -10.9 |
| 大分県 | 171 | 20.7 | -9.6 | 10.7 |
| 山口県 | 142 | 20.0 | 6.7 | 6.7 |
| 福島県 | 104 | 20.0 | 0.0 | 0.0 |
| 岩手県 | 102 | 18.1 | -30.6 | -23.6 |
| 秋田県 | 52 | 17.6 | 6.1 | -17.7 |
| 徳島県 | 76 | 17.3 | -6.7 | -8.4 |
| 香川県 | 118 | 17.2 | -8.2 | 9.5 |
| 青森県 | 56 | 15.4 | -7.6 | -3.8 |
出所:国土交通省「不動産情報ライブラリ」より東京不動産研究所作成。サンプル100件未満の県の前年比は参考値です。
人口移動:日本人が転入超過となったのは7都道府県だけ
2025年に日本人が転入超過となった都道府県は7つだけで、残る40は転出超過です。
転入超過の上位3は、東京都 +65,219人(日本人 +65,597、外国人 -378)、神奈川県 +28,052人(日本人 +18,524、外国人 +9,528)、埼玉県 +22,427人(日本人 +12,529、外国人 +9,898)です。転出超過が最も大きい3県は、広島県 -9,921、福島県 -7,197、静岡県 -6,711 です。東京都の +65,219人のうち、20〜39歳は +76,617人で、総数を上回っています。つまり、それ以外の年齢層は合計で転出超過です。
外国人の国内移動は、これとは別の構図を示しています。転入超過が大きいのは埼玉県 +9,898、神奈川県 +9,528、兵庫県 +1,515、転出超過が大きいのは千葉県 -8,252、愛知県 -3,987、福岡県 -3,740 です。このデータは市区町村間の住民登録の移動で、国外からの転入は含みません。そのため外国人の数値は、日本国内での再配置を示すもので、総数の増減ではありません。

図2 転入超過 上位10・下位10の都道府県、日本人と外国人(2025年)。出所:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(e-Stat)より東京不動産研究所作成。
日本人が転入超過となった7都道府県は、下の表のとおりです。総数で転入超過となった都道府県も7つですが、顔ぶれは少し異なります。滋賀県は外国人の流入によってプラス(+353)に転じ、愛知県は外国人の流出によってマイナス(-2,181)になっています。
表2 日本人が転入超過の7都道府県(2025年、人)
| 都道府県 | 転入超過(総数) | 日本人 | 外国人 | 20〜39歳 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 65,219 | 65,597 | -378 | 76,617 |
| 神奈川県 | 28,052 | 18,524 | 9,528 | 24,433 |
| 大阪府 | 15,667 | 17,489 | -1,822 | 12,596 |
| 千葉県 | 7,836 | 16,088 | -8,252 | 2,793 |
| 埼玉県 | 22,427 | 12,529 | 9,898 | 14,368 |
| 福岡県 | 5,136 | 8,876 | -3,740 | -1,288 |
| 愛知県 | -2,181 | 1,806 | -3,987 | 2,075 |
出所:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(e-Stat)より東京不動産研究所作成。
賃貸物件は、まず人が流れ込む先を見る
賃貸物件に投資するなら、立地は日本人が転入超過となっているこの7都道府県と、その通勤圏に絞ることをおすすめします。残る40県の賃貸需要は、外国人の流入に支えられている場合を除き、縮小しています。
比較的新しいのは外国人の国内移動で、東京・千葉から、神奈川・埼玉など家賃の低い隣県へ移っています。神奈川・埼玉の小型賃貸住戸は、この移動の直接的な受益者です。こうした入居者は家賃に敏感な一方、通勤時間にはそれほど敏感ではありません。賃料は周辺相場より5%以上高く設定しないことをおすすめします。そのほうが入居者が決まりやすくなります。千葉と福岡で外国人が転出超過となっていることは、外国人入居者が中心の物件では、空室期間を長めに見積もる必要があることを意味します。
データについて
- 価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約データ(2025年、中古マンション)。㎡単価の単位は万円です。サンプル100件未満の県の前年比は参考値です。
- 人口:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」2025年。市区町村間の住民登録の移動で、国外からの転入は含みません。
- 本記事は公開データの整理と統計分析であり、投資助言ではありません。
参考資料
本シリーズの他の記事
- 東京23区の住宅価格2026:20年で2倍、2024年第3四半期から都心と周辺が分岐
- 同じ区なのに価格差が大きいのはなぜ?築年数・駅からの距離・浸水深
- 東京のオフィスビル一棟取引価格:15年で2.5倍、2025年は1㎡あたり78万円
- 東京の不動産市場、これから何を見るか:新築供給、2040年の人口、若い世代の転入先
