兆基問題が発覚、あなたの家賃は安全ですか?日台の監督制度の違いを3つの問いで読み解く

2026年8月03日|投資の基礎知識|東京ママ|温 芳瑜(宅建士試験合格)
兆基問題が発覚、あなたの家賃は安全ですか?日台の監督制度の違いを3つの問いで読み解く
🏢 株式会社 J&E | 📜 宅建士・税理士・司法書士提携 | 🇹🇼 台湾人が運営 | 📍 東京都

国内の賃貸管理最大手・兆基屋管の関連企業である趙姫投資と寄居蟹管理顧問が、8月3日に社債の利息を正常に支払えないと報じられました。約200名の投資家が自救会(被害者の会)を結成し、その数は現在も増え続けています。最大で900万元を投じた方もおり、元本と利息がすべて回収不能な状態となっています。

兆基屋管が提供しているサービスは主に2種類です。「代管」は家主が自ら賃貸し、兆基が家賃の回収・修繕・入居者対応を代行するサービスです。「包租(サブリース)」は兆基が家主から物件を一括借り上げ、転貸オーナーとして入居者に転貸するサービスで、家主は毎月一定の家賃を受け取ります。

兆基は現在約2万8,000戸を管理しており、2024年にはエイサーグループが出資し、当初は上場を計画していました。また、メディアの報道によると、被害者の中には政府の社会住宅サブリース・管理事業に協力していた家主も複数おり、長期にわたる取引で兆基ブランドへの信頼を築いた後、趙姫・寄居蟹の社債への投資に誘導されたとのことです。勧誘過程で兆基のブランド・人員・施設が使用されたかどうかについては、現在も当局の調査が続いています。家主の家賃や入居者の敷金が流用されたという証拠は、現時点では確認されていません。

しかし、この事件は3つの重要な問いを残しています。社債の販売方法として何が適法なのか。業者が代収した家賃を投資に回すことは許されるのか。そして未公開株式で債務を弁済することにはどのようなリスクがあるのか。

日本でも数年前にサブリース業者が家賃の支払いを停止するという危機が発生し、それがその後の法改正の重要な背景となりました。両国の制度を比較することで、兆基事件で今後注目すべきポイントが見えてきます。

問題その1:100名以上を対象に社債を販売することは適法ですか?

趙姫投資と寄居蟹が発行したのは社債です。簡単に言えば、投資家から資金を借り入れ、利息の支払いを約束するものです。

台湾の「公司法(会社法)」では、非公開発行会社が社債を私募する場合、原則として1回あたり35名を超えてはならないと定められており、金融機関はこの人数に含まれません。日本の判断方式も同様で、主に1回の発行における勧誘対象が一般投資家50名以上に達するかどうかで判断されます。一定の条件を満たした場合、公募に該当するとみなされ、法令に基づく届け出と情報開示が必要となります。

現在、自救会の人数が約200名に上るからといって、発行手続きが必ずしも違法とは言い切れません。これらの投資家は2社にまたがっており、発行期もそれぞれ異なる可能性があります。各期が人数制限と法定手続きを満たしていれば、総人数だけで違法性を判断することはできません。

しかし、各期を35名以下に抑えていたとしても、必ずしも安全とは言えません。業者が同じ販売経路と定型的なトークスクリプトを使って、不特定多数の一般人に継続的に勧誘を行った場合、実質的な公募とみなされ、「証券取引法」に抵触する可能性があります。

「銀行法」上の違法な資金調達罪についても、35名という人数基準は適用されません。判断の核心は、業者が多数または不特定多数の人々から資金を集め、元本に対して著しく不相当な利息または報酬を約束していたかどうかにあります。メディアが入手した社債募集説明書によると、趙姫投資は10億元の無担保社債を発行する計画で、年利率は最大9%に設定されていました。この利率水準が「著しく不相当」に該当するかどうかは、勧誘対象や勧誘方法とあわせて、今後の認定における重要な判断基準となります。

また、メディアの報道によると、趙姫投資の責任者である李建成氏は同業他社への融資にも乗り出しており、その利率は8%から12%に達していたとのことで、グループ全体の資金運用がハイリスクな貸付に偏っていたことが示されています。調達した資金が実際にどの投資・融資に流れ、関連収益が社債の元利払いに充足していたのかどうかも、今後解明が必要な重要なポイントです。

主管機関や捜査当局が介入した場合、各期ごとの勧誘人数・発行手続き・届け出状況を確認するとともに、複数期にわたる発行が実質的に不特定多数への募集に相当するか、また利率や勧誘方法が違法な資金調達に該当するかについても検証が行われることになります。

問題その2:業者は代収した家賃を投資に回すことができますか?

これが日台の制度において最も大きな違いが生じている点です。

家主が物件を業者に委託した後、入居者は通常まず業者に家賃を振り込み、業者がそれを家主に送金します。重要なのは、この資金が業者の運営資金と分別して管理されているかどうかです。

日本では2021年に「賃貸住宅管理業法」が全面施行され、200戸以上を管理する業者には登録が義務付けられました。また、業者が管理契約に基づいて代収した家賃・敷金・共益費は、会社の自己財産と分別して管理しなければなりません。

実務上、業者は顧客資金を区別できる専用口座を使用し、帳簿には各資金がどの家主のどの契約に属するかを記録することが求められます。主管機関は業者に対して報告を求めることができ、会社に立ち入って帳簿を検査する権限も持っています。業者が代収家賃を会社の資金と混同し、投資や関連企業への融資に流用した場合、財産分別管理義務に違反する可能性があります。悪質な場合には、主管機関が業務停止や登録取消を命じることができます。

この制度は主に「代管」モデルにおいて家主のために代収される資金に適用されます。サブリース業者が転貸オーナーとして入居者から受け取る家賃は、法律上は会社の営業収入に該当する可能性があり、同じ規定が適用されるとは限りません。

なお、日本の分別管理は口座・会計上の区分であり、信託への強制預託は要求されていません。業者が倒産した場合に資金が全額回収できるかどうかは、実際のキャッシュフローおよび破産手続きの状況によって判断されます。

日本が監督を強化した重要な背景として、2018年の「かぼちゃの馬車事件」があります。Smart Days社が「30年家賃保証」をうたって投資家に融資を受けさせ、女性向けシェアハウスを購入させたうえで会社が一括借り上げを行いました。同社が倒産すると、約700名のオーナーが家賃収入を失いながらも高額なローンの返済を続けなければならなくなり、さらに銀行による融資書類の改ざんなどの問題も明るみに出ました。

台湾では2018年に施行された賃貸借専門法により、業者への許可取得・営業保証金の供託・専門管理人員の配置が義務付けられています。主管機関も業務記録・書類の検査や業者への説明要求を行うことができます。しかし台湾には現時点で、一般的な分別管理義務はなく、代収家賃・敷金についてどのような口座を使用すべきか、また帳簿をどのように区分すべきかについての統一規定もありません。さらに、業者が家主に定期的に資金の流れを報告することも法律上義務付けられていません。

そのため、台湾の主管機関には検査権限があるものの、日本のような明確な分別管理基準がなく、顧客資金が会社資金と混用されていないかを迅速に確認することが難しい状況にあります。

今回の債務不履行は社債投資家の資金に関するものであり、兆基屋管は代管業務への影響を否定しています。家主の家賃が流用されたかどうかについては、現時点では証拠がありません。今後確認が必要なのは、兆基屋管が代収した家賃・敷金が独立して管理されていたかどうか、そして兆基屋管と社債発行関連企業との間に貸付・担保・その他の資金の往来があったかどうかです。

問題その3:未公開株式での債務弁済は認められますか?

李建成氏は兆基屋管の株式1万6,000株(1株70元計算で総額約11億2,000万元相当)による債務弁済を提案しています。

台湾・日本ともに、株式による債務弁済を原則として禁止してはいません。債務者が現金での支払いができない場合、株式やその他の資産による弁済を提案することは可能ですが、債権者の同意が必要です。投資家はこれを拒否する権利があり、自救会は現時点でこの提案を受け入れていません。もし投資家が弁済合意書に署名して株式を受け取った場合、弁済された範囲内の元の債権は清算済みとみなされる可能性があり、投資家は債権者から株主へと立場が変わることになります。

この二つの法的立場には大きな違いがあります。会社清算の際、一般債権者は株主よりも優先的に弁済を受けられます。また、未公開株式には公開取引市場がなく、1株70元という価格はあくまでも提案時の評価額に過ぎず、実際の価値と換金性については疑問が残ります。

もし百億元規模の資金不足という報道が事実であれば、11億2,000万元相当の株式では約1割程度しかカバーできません。会社の経営状況がさらに悪化すれば、株式の価値も下落する可能性があります。また、危機的状況下での資産移転が法律上の取消要件に該当する場合、後に取り消される可能性もあります。自救会は現在、仮差押えや仮処分の申立てを検討しており、司法手続きの結果が出る前に関連資産が移転されることを防ごうとしています。

日本が取り組んでいること:代収家賃の管理

社債の適法性については、台湾・日本ともに各発行の勧誘人数・勧誘方法・実際の手続きを確認する必要があります。株式による債務弁済も、両国ともに原則として認められており、債権者の同意が前提となります。

台日間で最も顕著な違いは、代収家賃の管理にあります。

日本では登録管理業者に対し、家主のために代収した資金を会社財産と分別管理し、主管機関が検査できる帳簿を保持することが義務付けられています。台湾には許可制度・管理人員・営業保証金・検査制度がありますが、顧客資金を別口座で管理することはまだ義務付けられていません。

この防線は企業の投資失敗を防ぐことはできませんが、家主の家賃が他の資金不足を補うために流用されるリスクを低減することができます。

兆基事件において今後の鍵となるのは2点です。代収した家賃と敷金が独立して管理されていたかどうか、そして兆基屋管と社債を発行した関連企業との間に貸付・担保・資金の往来があったかどうかです。顧客資金が完全な状態で保全されていれば、家主と入居者への直接的な影響は限定的なものに抑えられる可能性があります。しかし家賃や敷金がグループの資金運用に混入していた場合、影響の範囲は社債投資家にとどまらず、賃貸管理本業にまで拡大する可能性があります。

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