「日本で会社を作りたい」。この言葉を口にする台湾人の理由は、人によって大きく違います。
法人名義で不動産を買い、資産を整理したい人もいます。日本で合法的な事業体を持ちたい人もいます。経営管理ビザという道をはっきり狙って、日本に長期合法滞在できるようにしたい人もいます。
この三つの目的は、会社の設計方法、資本金の要件、設立の流れ、そして設立後の維持コストにおいて、それぞれ大きく異なります。混同すると、目的に合わない会社を作ってしまい、時間とお金を無駄にしてしまう可能性があります。
この記事では、二つの主要ルートを分けてはっきり説明し、あわせて各地の自治体が外国人の法人設立に提供している支援制度もまとめます。
先に結論を言います。日本で会社を作る前に、自分が「投資保有」をしたいのか「経営管理ビザを取りたい」のか、まずはっきりさせてください。二つの道は設計がまったく違います。純投資で全額現金、融資を使わないなら合同会社が一番コストを抑えられます。銀行融資を使う予定がある、または共同経営者を入れたいなら株式会社を選びましょう。ビザを狙うルートでは特に注意が必要です。2025年10月の新制度で基準が一気に引き上げられ(資本金3,000万円以上、常勤職員1名の雇用、さらに日本語能力と学歴・職歴の要件が加わりました)、不動産を買って家賃収入を得るだけの受動的な仕組みでは、たいてい審査を通りません。最後に、台湾人はCFC制度を忘れないでください。あなたがコントロールする日本法人の利益は、特定の条件下で台湾側への申告が必要になります。
まず目的を確認する:なぜこの会社を作るのか?
設立の手続きに入る前に、まず自分に問いかけてください。この会社は、主に何のために作るのか。
目的Aは資産管理、不動産投資、費用の一元管理です。法人名義で不動産を保有し、家賃収入と支出をまとめて管理したいと考えています。台湾に居住しており、日本に長期滞在する計画は今のところない、あるいはすでに他のビザで日本の在留資格を持っている、というケースです。
目的Bは、日本で合法的に長期滞在・就労し、会社をビザの受け皿にすることです。日本で実際に会社を設立・運営することで経営管理ビザ(経営・管理ビザ)を取得し、事業主として長期にわたり合法的に日本に滞在したい、というケースです。
この二つの目的は重なることもありますが、主な狙いが目的Bであるなら、会社の設計は最初から入管局の審査基準に合わせる必要があります。投資管理の発想だけで設立してはいけません。
ルート一:純投資用の法人(ビザ不要)
どんな人に向いているか?
台湾ですでに安定した収入と身分を持ち、日本の会社でビザを取る必要がなく、法人名義で複数の日本の不動産物件を保有する計画がある、あるいはすでに日本の他のビザ(高度専門職、配偶者等)を持っている人にとって、このルートは合理的です。
株式会社にするか、合同会社にするか?
合同会社は設立費用が低いと聞き、さらにGoogle、Apple、Amazonの日本法人も合同会社だと知って、台湾の投資家も合同会社を選ぶべきだと考える人が多くいます。この推論は整理しておく必要があります。
Googleなどアメリカ企業が合同会社を選ぶのは、アメリカの税法にCheck-the-Boxというルールがあるためです。これはアメリカの親会社が日本の合同会社をアメリカの税制上「透明体」として扱うことを認め、子会社の損益をそのまま親会社側の計算に反映させることで、国際的な税務の一体化を図る仕組みです。これは純粋にアメリカの納税義務者のために設計された制度であり、台湾の税法には対応する制度がありません。台湾の投資家にとっては、日本の合同会社を持とうが株式会社を持とうが、台湾側の税務上の扱いはまったく同じで、Check-the-Boxの理屈はそもそも当てはまらないのです。
台湾の投資家にとって合同会社の実質的なメリットとして残るのは、設立コストが低い(登記費用は約6万円で、株式会社より約14万円安い)、決算公告の義務がない、役員に任期の制限がないという点だけです。日本側の税務構造は、合同会社と株式会社でまったく同じです。
ただし、合同会社には知っておくべき現実的な制限がいくつかあります。銀行融資の通りやすさは株式会社より全般的に低く、一部の銀行は合同会社への法人向け不動産ローンをそもそも取り扱いません。入管局も、ビザ審査において合同会社への姿勢はやや保守的です。将来、共同経営者を入れたり出資比率を調整したりする必要が出てきた場合、合同会社の持分の仕組みは株式会社ほど柔軟ではありません。
つまり、純投資目的で全額現金購入、銀行融資も不要、ビザや共同経営者を入れる計画もない場合に限って、合同会社の低コストというメリットが本当に意味を持ちます。このうちどれか一つでも当てはまらないなら、通常は株式会社のほうが手堅い選択になります。
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
設立登記費 | 約6万円 | 約15万円 |
定款認証費用 | 不要 | 約5万円 |
決算公告義務 | なし | あり |
役員任期 | なし | 最長10年、重任登記が必要 |
銀行融資の通りやすさ | 低〜中 | 高め |
経営管理ビザへの適性 | やや不利 | やや有利 |
外部資金の導入 | 難しい | 柔軟 |
日本の税務上の扱い | 株式会社と同じ | 合同会社と同じ |
設立の基本的な流れ
設立の第一歩は、会社の基本情報を確定させることです。商号(重複がないか法務局のオンラインで確認可能)、本店所在地(日本の住所が必要)、事業目的(不動産の取得、保有、賃貸、管理など、明記しておくことで法的根拠になります)、そして資本金(法律上は1円でも構いませんが、最低100万円以上をお勧めします。銀行口座開設の要件がそれより高い場合もあります)です。
次に設立書類を準備します。合同会社は公証が不要で、定款は社員全員の署名があれば足ります。株式会社の定款は公証人の認証が必要です。どちらも代表者の印鑑関連書類、そして出資額の振込記録を準備する必要があります。
書類が揃ったら法務局に設立登記を申請し、登録免許税を納めます。登記完了後は税務署と地方自治体への届出が必要で、あわせて事業年度(決算月)を決めます。
最後は法人銀行口座の開設で、これが実務上もっとも難しいステップの一つです。日本の銀行は外資系法人の口座開設審査がかなり厳しいので、事前に事業計画書や物件資料を用意しておくことをお勧めします。台湾系銀行の日本支店(台湾銀行東京支店など)は台湾人が設立した法人に比較的友好的なので、優先的に相談する候補として挙げられます。
設立後にかかる年間固定費
項目 | 概算金額 |
|---|---|
法人住民税均等割(東京) | 約7万円/年 |
税理士費用(記帳+申告) | 約20〜50万円/年(物件数による) |
行政書士等の諸費用 | 必要に応じて |
合計目安 | 約30〜60万円/年から |
物件の規模が小さいうちは、この固定費が占める割合を無視できません。
ルート二:経営管理ビザの取得を目指す法人
経営管理ビザとは何か?
経営管理ビザは、日本の入管法上の在留資格の一つで、外国人が日本で事業を営む経営者または管理者として長期滞在することを認めるものです。初回の取得は通常1年で、その後は事業実績に応じて更新を申請し、3年、5年の期間を取得できます。長期的に安定すれば、将来の永住申請の条件の一つにもなります。
日本に長く住みたい、日本で正式に事業を展開したいと考える台湾人にとって、現在もっともよく使われる合法的なルートの一つです。
入管局の審査における核心条件(2025年10月に大改正、基準が全体的に引き上げ)
先に結論を言います。もしあなたが調べた情報がまだ「資本金500万円、または従業員2名雇用のどちらかでよい」と言っているなら、それは旧制度です。2025年10月16日から、経営管理ビザの上陸基準省令が大きく改正され、基準が一気に一段階引き上げられました。新旧の完全な対照表やほかの移住ルートについては、別記事〔2026年日本移住完全ガイド〕にまとめてありますので、ここでは「会社設立」に直接関わる部分だけをはっきり説明します。
第一に、事業に実質が伴っていること。会社には実際の事業活動が必要で、不動産を保有して家賃を得るだけの受動的な仕組みは、審査上「事業性が不足している」と判断されやすく、通過は難しいです。
第二に、事業規模の基準が変わったこと。これが今回の改正でもっとも大きな変更点です。旧制度は「資本金500万円以上、または日本在住者を2名以上雇用」のどちらか一方でよいというものでした。新制度では、資本金または出資総額が3,000万円以上に達し、さらに常勤職員を最低1名(日本人、特別永住者、または永住者・日本人の配偶者・定住者などの身分を持つ人)雇用することが必要になりました。どちらか一方ではなく、両方とも満たす必要があります。
第三に、日本語能力の要件が新設されました。経営者本人か、雇用する常勤職員のどちらか一方が、日本語でビジネスができる程度の能力を持つ必要があり、目安はJLPT N2(CEFR B2)以上です。
第四に、学歴・職歴の要件が新設されました。申請者は、経営や事業に関連する博士号、修士号、専門職学位を持っているか、あるいは3年以上の経営管理経験を持っているか、どちらかを満たす必要があります。
第五に、固定の事業所があること。実際に使えるオフィス空間が必要で、バーチャルオフィスの住所だけでは認められません。入管局が現地確認を行うこともあります。
さらに、事業計画書はもう自分だけで適当に書くわけにはいかず、新制度では中小企業診断士、公認会計士、税理士といった専門家の確認を受けることが求められます。2025年10月より前にすでにビザを取得している人には3年間の経過措置があり、更新時にまだ基準を完全に満たしていなくても、経営状況が良好で、納税もきちんと行われており、次回更新までに基準達成の見込みがあれば、入管局が総合的に判断し、一律に不許可にするわけではありません。
純粋な不動産投資で経営管理ビザを申請できるか?
これは多くの台湾人が抱く疑問です。答えは、通常は難しいが例外はある、です。
入管局は不動産賃貸業を主体とする申請に対してはやや保守的な姿勢を取ります。家賃収入は能動的に経営する事業ではなく、受動的な収入とみなされるためです。しかし、事業内容に不動産仲介、コンサルティング、ホテルや民泊の運営管理(旅館業許可が必要)、あるいは他人の物件管理を主とする不動産管理業などが含まれていれば、こうした能動的なサービス性を持つ事業と不動産保有を組み合わせることで、申請が通る余地は広がります。
ポイントは、事業の主体が他者にサービスや価値を提供する性質を持っていることであり、単に自分の資産を管理しているだけではダメだということです。
ただ、最近私が見た事例では、一棟買って家賃収入を得ていたケースで、経営管理ビザの更新時にはダメだろうと思われていたのに、まさかの通過となったものがありました。手伝った行政書士本人も「これは奇跡だ」と思ったそうです。
設立の流れ(経営管理ビザ用途の場合)
このルートでは株式会社を選ぶことをお勧めします。入管局は法人形態を明文で制限しているわけではありませんが、審査の実務上、株式会社の方が受け入れられやすいのが実情です。資本金は2025年10月の新制度に沿って3,000万円以上を用意し、同時に常勤職員1名の雇用も計画しておく必要があります。この二つは入管局の基準を満たすための必須条件であり、「用意できる範囲でいい」という融通が利く話ではありません。
事業所はバーチャルオフィスの住所では認められず、実際に使えるオフィス空間が必要です。シェアオフィスは多くの場合認められますが、入管局が事業所の実在を確認できることが条件です。
事業計画書の質が非常に重要です。事業内容の説明、市場分析、収支見込み、想定顧客層をカバーしている必要があります。申請が却下される理由の多くは、計画書の内容が抽象的すぎて、事業の実質性が見えないことにあります。
法人を設立する前に、経営管理ビザに詳しい行政書士に事業計画が申請の方向性に合っているかを確認してもらうことを強くお勧めします。設立してから構造が合っていないと気づいて、時間とお金を無駄にすることを避けるためです。
各地の自治体による外資系企業設立支援リソース
全国的なリソース
JETRO(日本貿易振興機構、jetro.go.jp)は、外資系企業の日本での設立に関する総合ガイドを提供しており、業種ごとの許認可の説明、行政書士の紹介、無料の個別相談などがあり、中国語対応もあります。J-Biz(外国人起業家スタートアッププログラム)は一部の地方自治体とJETROが連携して推進しているもので、外国人の日本での起業に特化した支援を提供しており、ビザ申請のサポートや入居補助などが含まれます。
東京
東京都中小企業振興公社(tokyo-kosha.or.jp)は多言語での創業相談を提供しており、外国人は中国語での相談を予約できます。東京都産業労働局の外国企業誘致窓口は、外資系企業の設立について初期相談を提供しており、オフィス入居補助が出ることもあります。東京都は創業ワンストップ相談会も定期的に開催しており、行政書士、税理士、社会保険労務士との無料個別相談を予約できます。
大阪
大阪府外国企業誘致センター(IBPC Osaka、ibpcosaka.or.jp)は外資系企業設立のワンストップ相談を提供しており、中国語対応の窓口があります。大阪市内にも複数の創業支援窓口があり、無料の創業相談を申し込めます。
福岡
福岡市は近年、外資系企業やスタートアップの誘致に積極的で、スタートアップカフェでは英語と中国語での創業相談を提供しており、一部の支援プログラムでは外国人起業家向けの優遇措置もあります。福岡市の外国人創業活動促進事業では、特定の条件のもとで、外国人が事業準備を理由に福岡に短期滞在し、設立準備を行うことが認められており、正式にビザを取得する前の一つの過渡的な選択肢になっています。
北海道
北海道経済産業局は、北海道での外資系企業設立に関する相談や補助金情報を提供しています。
設立前にじっくり確認しておくべき三つのこと
- 台湾の被支配外国法人(CFC)制度は2023年に施行されました。あなたが台湾の税務上の居住者で、海外法人(日本法人を含む)を支配している場合、特定の条件下で、その会社の利益を台湾側で個人所得として申告する必要が生じることがあります。台日両方の税務構造を同時に計画する必要があり、日本側だけを見るのではなく、越境税務に詳しい専門家に確認することをお勧めします。
- 銀行口座の開設は早めに準備してください。日本の銀行は外資系法人の口座開設審査がますます厳しくなっており、数ヶ月待たされる銀行もあれば、開設を拒否される場合もあります。事業計画が固まったら、口座開設は最優先事項として位置づけるべきで、設立後になって考え始めるものではありません。
- 行政書士の選び方は重要です。日本での法人設立とビザ申請を扱う正式な専門家は行政書士です。台湾人の案件に慣れた行政書士を選べば、書類のやり取りにかかる時間を大幅に節約でき、ビザ申請の事業計画書作成でもより的確な対応が期待できます。
早見表:自分にはどちらの道が向いているか?
ケース | おすすめ |
|---|---|
台湾で安定した身分があり、日本の物件を全額現金で購入、銀行融資は不要 | 開業コストを一番抑えられる合同会社、投資用途(ただし私は最初から株式会社にすることをお勧めします。後々の柔軟性が高いからです) |
銀行融資が必要、または日本の他のビザで資産管理 | 株式会社、投資用途 |
日本に長期居住したい、事業主として在留したい | 株式会社+経営管理ビザ申請 |
ホテル、民泊、不動産仲介など能動的サービス型事業をしたい | 株式会社+経営管理ビザ、業種に応じた許可が必要 |
まだ検討中で方向性が定まっていない | まず行政書士に相談し、確認してから設立 |
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参考資料
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」(2025年10月の経営管理ビザ新制度)
- 法務省・各地法務局「商業・法人登記」関連の説明(設立登記と登録免許税)
- 台湾財政部「被支配外国法人(CFC)制度」(台湾、2023年施行)
- JETRO(日本貿易振興機構)外資系企業の日本進出支援情報
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務、法律、ビザに関する助言を構成するものではありません。実際の計画については、日本の入管および越境税務の経験を持つ専門家にご相談ください。東京ママ japanlive.info|台湾人のために日本不動産の実践知識をまとめています
