日本の不動産購入、法人名義か個人名義か:台湾人投資家のための完全判断ガイド

2026年6月01日|税務・ビザ|東京ママ|温 芳瑜(宅建士試験合格)
日本の不動産購入、法人名義か個人名義か:台湾人投資家のための完全判断ガイド
🏢 株式会社 J&E | 📜 宅建士・税理士・司法書士提携 | 🇹🇼 台湾人が運営 | 📍 東京都

日本の不動産の話をしていると、「私は法人名義で買いました」という話を耳にすることがあるかもしれません。

なんだかすごそうに聞こえます。でも本当に知りたいのは、法人とは何かではなく「自分に必要なのか」「作ったら実際に何が変わるのか」ということのはずです。

この記事ではその疑問に単刀直入に答えます。

結論から言うと、最初の1、2軒を買う段階なら個人名義で十分です。法人が本当に有利になるのは、複数物件を積み上げていく、一棟や民泊に進む、あるいはビザや資産承継の計画がある場合です。ただし法人には毎年、固定費(住民税均等割+税理士費用)だけで30万円からかかり、物件が小さいとこの固定費に利益を食われてしまいます。さらに台湾人が最も見落としやすいのがCFC制度です。あなたが支配する日本法人の利益は、一定の条件下で台湾側にも申告義務が生じます。


法人での購入と個人での購入、何が違うのか

日本の法律では、外国人が日本で会社を設立し、その会社名義で不動産を購入することが認められています。不動産登記上の所有者は会社であり、あなた個人ではありません。

名義が違うだけのように聞こえますが、その裏にある税金の計算方法、経費として認められる範囲、そして将来資産をどう引き継ぐか転がすかというルールは、まったく別物です。


なぜ法人で買う人がいるのか。4つの実際の理由

理由1:ある規模を超えると税率構造は法人の方が有利になる

台湾人が個人名義で日本の不動産を買って賃貸する場合、家賃収入は原則として日本で課税されます。非居住者が家賃を受け取る場合、原則として賃借人が家賃を支払う際にまず20.42%を源泉徴収し、その後確定申告で精算して過不足を調整します。ただしここには見落とされがちな例外があります。賃借人が個人で、しかも本人か親族の自己居住用として借りる場合は源泉徴収が不要です。実際に20.42%が発生するのは、多くの場合法人が借りる、事業用途、あるいは個人でも自己居住用ではないケースです。台湾本国の所得がもともと低くない場合、日本の家賃収入を個人所得に上乗せすると、全体の税率がかなり高くなることがあります。

日本法人の実効税負担(地方税、事業税などを含む)はおおよそ25%から35%の間に収まることが多いですが、実際には資本金、所在地、所得額、各種地方税によって変動するので、あくまで概算のレンジです。ただしこれは法人の税率が必ず個人より低いという意味ではありません。本当に価値があるのは、どの年にどの支出を計上するかを自分でコントロールできる点です。そしてこれが意味を持つのは、あなたの所得規模が、税率差を操作する価値があるレベルにあるという前提があってこそです。

理由2:経費として認められる範囲が広い

個人での確定申告でも一部の支出は計上できますが、合理的に認められる範囲は法人より狭くなります。法人はそれ自体が事業主体なので、不動産の保有や管理に合理的な関連がある支出であれば、会社の経費として認められる可能性が高くなります。東京に物件を見に行くための航空券や宿泊費、税理士や行政書士への依頼費用、物件管理用のオフィス設備や通信費、リフォームや設備更新などです。ただしここで一度ブレーキをかけておきます。経費として計上できることと、何でも申告できることは別物です。1件1件に業務上の必要性と合理性があり、証憑を保管でき、業務按分の比率も適切でなければなりません。株主個人の旅行や私的な支出が、法人名義になったからといって自動的に会社の経費になるわけではないのです。この前提のうえで、経費として計上できる範囲が広がれば、課税所得はその分減ります。この効果は複数物件を保有している場合や、物件規模が大きい場合に最も実感しやすくなります。

理由3:売却タイミングの柔軟性

個人が日本で不動産を売却する場合、重要なルールがあります。売却する年の1月1日時点を基準に、保有期間が5年を超えていなければ短期譲渡所得(税率が高い)が適用され、5年を超えて初めて長期譲渡所得(税率が低い)が適用されます。市場の変化で早く売りたくなった場合、この期間制限が意外と大きなコストになることがあります。

法人が不動産を売却する場合は、個人の分離課税のロジックではなく、会社全体の損益計算に組み込まれます。同じ年度に他の減価償却費、修繕費、あるいは過去年度から繰り越した赤字があれば、それらと組み合わせることで税負担全体を調整する余地が広がります。短期間で資産を入れ替える可能性がある投資家にとって、この柔軟性は重要なポイントです。

理由4:資産は自分一人のものではない

多くの台湾投資家が日本で不動産を買う背景には、次の世代に残したい、あるいは家族の資産配分をしたいという考えがあります。資産が個人名義の場合、将来移転するときに動かすのは不動産そのものです。登記変更、名義変更、相続税と、どのステップも具体的で、費用も安くありません。資産が会社の中にある場合、将来調整できるのはその会社の株式を誰が持つかという部分になり、スキームの組み方に選択肢が増えることが多くなります。


法人には見過ごせないコストもある

固定費は儲かっているかどうかと関係なく発生する

法人住民税の均等割部分は、会社が利益を出しているかどうかに関係なく納める必要があります。東京の場合、最低でも年間およそ7万円です。これに税理士費用(記帳、申告)や会社維持に関わる書類関連の費用を加えると、小規模な投資法人でも年間の固定支出は少なくとも30万円以上が目安になります。物件数や案件の複雑さによって増減します。

もし保有しているのが年間家賃60万円のワンルームだとしたら、この固定費の割合はかなり重くのしかかります。

会社を管理すること自体が一つの仕事になる

あなたは物件だけでなく、会社そのものも管理することになります。毎年の申告、帳簿管理、議事録の作成は必須の事務作業であり、これは人によっては確実に時間コストになります。

設立には一時的な費用がかかる

日本で株式会社を設立するには、登記費用と定款認証費用を含めておよそ20万円、合同会社ならおよそ6万円かかります。これに加えて、行政書士に依頼する場合はその費用が別途発生します。


台湾投資家にとって特に重要なCFC申告の問題

台湾の被支配外国法人(CFC)制度は2023年に正式施行されました。あなたが台湾の税務上の居住者で、自分が支配する海外法人(日本法人も含む)を通じて資産を保有している場合、一定の条件下ではその法人の利益を台湾側で申告し、個人所得に算入しなければならない可能性があります。

これは法人を使ってはいけないという意味ではなく、台湾と日本両側の税務スキームを同時に計画する必要があるということです。日本側だけを見て判断すると、全体としては不利な決定をしてしまいがちです。台湾の税務と日本の税務の両方に詳しい専門家に確認することをおすすめします。


どんな人が法人を使う価値があるのか

複数物件を積み上げていくつもりの人。区分所有のワンルームであっても、一棟に進む計画であっても、物件数が増えるほど、一つのスキームで統一管理する方が、個人名義で分散させておくより税務・事務の両面ですっきりします。

目標が一棟、民泊、旅館など経営を伴う資産である人。法人であれば取引先とのやり取り、融資の申し込み、経費計上のいずれも自然な形で進めやすくなります。

日本のビザ戦略を考えている人。例えば将来的に経営管理ビザの申請を希望している場合、法人は必須の器になります。ただし先に一言注意しておきます。2025年10月の新制度施行後、このビザの基準は大幅に引き上げられました(資本金3,000万円以上、常勤職員1名の雇用、さらに日本語能力や学歴・職歴の要件も追加)。しかも単に不動産を保有して家賃収入を得るだけの受動的なスキームでは、入国管理局から事業性が不十分と判断されることがほとんどです。つまり法人は必要条件ではありますが、「法人を作って物件を数戸買って家賃収入を得る」だけではビザが通るとは限らないということです。詳しい基準は〔2026年日本移住完全ガイド〕にまとめています。不動産投資と法人スキームは、最初からビザ戦略と一緒に設計するのが望ましいです。

台湾本国ですでにかなり高い所得がある人。個人所得税率がもともと高い状態で、日本の家賃収入をさらに個人に上乗せすると税負担はより重くなります。こうしたケースでは、法人の方が全体的なプランニングの余地が広がります。

家族のために長期的な資産配分を考えている人。これらの資産を将来どう引き継ぎ、どう管理していくか、法人を最初から用意しておけば、後々の整理の手間をかなり省けます。


今はまだ必要ない人とは

初めて1軒目を買う段階の人、まだ市場を探っている人、物件規模が小さい人、複数物件や一棟、ビザ、資産承継の計画がまだない人、あるいは法人を検討する理由が「なんとなく専門的に見えるから」だけという人は、まず個人名義で始めれば十分です。日本市場にもっと詳しくなり、計画がはっきりしてから法人を設立するかどうかを決めても遅くはありません。


よくある質問

Q:台湾人は日本で会社を作れますか?
作れます。日本は外国人による法人設立を制限していません。よく使われる形態は合同会社と株式会社で、どちらを選ぶかは用途によって決まります。設立費用の高い安いだけで決める話ではありません。台湾人が日本で会社を作るなら:投資用 vs ビザ用、この2つを先に理解してからお金をかけよう

Q:法人で買うと銀行融資は通りやすいですか?
必ずしも通りやすいわけではありません。設立したばかりの法人には財務実績がなく、銀行によってはむしろ慎重になります。個人名義でも安定した収入と信用実績があれば、融資条件がかえって有利になることもあります。

Q:個人で買った後、法人名義に移すことはできますか?
技術的には可能です。ただし名義変更という行為自体が、個人にとっては売却と同じ扱いになり、譲渡所得の計算が必要になります。税務コストが発生する操作なので、事前にシミュレーションしておく必要があります。

Q:日本法人の所得は台湾で申告する必要がありますか?
これがCFC制度の核心的な論点です。あなたの持株比率、会社の利益状況、そして免税条件に該当するかどうかによって結論は変わります。自己判断せず、専門家に確認することを強くおすすめします。

Q:法人は合同会社と株式会社どちらを選ぶべきですか?
Googleが合同会社を使っていると聞いて、台湾人も同じようにすべきだと思う人が多いのですが、Googleが合同会社を選んだ理由はアメリカ税法のCheck-the-Boxルールによるものであり、この仕組みは台湾投資家には一切当てはまりません。台湾人にとって合同会社の実際のメリットは、設立コストが低く事務負担が軽いという点だけです。銀行融資が必要な場合、経営管理ビザを申請する場合、あるいは将来パートナーを迎える可能性がある場合は、株式会社の方が手堅い選択です。Googleは合同会社を使っているけど、台湾人も真似すべき?日本の法人形態選びを徹底解説


まとめ

日本で法人を設立して不動産を買うというのは、買うか買わないかの問題を解決するものではなく、どういうスキームでその資産を持つかという話です。

ほとんどの台湾人投資家にとって、最初は個人名義で始めるのが理にかなった第一歩です。ただし最初から複数物件、一棟、ビザ、資産承継といった目標がある場合、法人はスキーム設計上の単なる選択肢ではなく、早い段階から計画に組み込む価値がある部分になります。

最後に一点。個人でも法人でも、日本と台湾両方の税務を同時に考える必要があります。日本側だけで計算していると、思わぬところで足元をすくわれかねません。


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参考資料


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法律アドバイスを構成するものではありません。実際の計画については、クロスボーダー税務と日本不動産の経験を持つ専門家にご相談ください。東京ママ japanlive.info|台湾の皆さんのために日本不動産の実戦知識を整理してお届けします。

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